液体にはたらく力の3次元解析に成功!~非接触の計測方法で、医療や工学分野への応用に新しい道を拓く~

液体にはたらく力の3次元解析に成功!
~非接触の計測方法で、医療や工学分野への応用に新しい道を拓く~

 国立大学法人欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网 大学院工学研究院先端機械システム部門 田川義之教授らの研究グループは、流れる液体にはたらく力を3次元的に解析することに成功しました。液体の流れの中の力について、これまでは主に一方向(正面方向)からの計測しか行われていませんでした。そこで本研究では光の性質を応用し、流れる液体を図1のように三方向を考慮して計測しました。その結果、液体にはたらく力をより正確に計測できるようになりました。さらに、今まで見過ごされがちだった「二次応力光学則」という法則を使って解析をした結果、液体にはたらく力をこれまでよりはるかに正確に予測できることが確認されました。本研究はこれまでの計測方法の限界を超えた画期的なものであり、液体の内部の力を直接触れることなく計測できるのが大きな利点です。今後は血液やジェル、ポリマーなど、医療、食品、化学ほか様々な分野での応用が期待されています。

本研究成果は、Scientific Reports 14(9月20日付)に掲載されました。
論文タイトル:Examination of flow birefringence induced by the shear components along the optical axis using a parallel-plate-type rheometer
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-73087-3 

背景
 身の回りには、水力発電や飛行機など液体や気体の流れを活用した技術(流体工学)があふれており、常にそれらの流れを正確に計測するニーズがあります。かつては流速を計測して力を算出する方法が一般的でしたが、近年では、光の性質を用いた計測方法(偏光計測)の研究が進んでいます。しかし、これまでは流体を正面方向からしか計測しておらず(図1の水色の実線)、予測データと実際の計測データが一部一致しないことが課題でした。そこで、液体にはたらく力を3次元的に捉え、正確に計測する必要がありました(図1の水色の点線+赤+緑)。

研究体制
 本研究はウォービーウィリアム氏(欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学府機械システム工学専攻博士後期課程在籍)、中峰健登氏(大学院工学府機械システム工学専攻博士前期課程修了)、横山裕杜氏(大学院工学府機械システム工学専攻博士後期課程修了)、武藤真和氏(研究当時大学院工学研究院先端機械システム部門博士研究員)、および田川義之教授(大学院工学研究院先端機械システム部門)により実施されました。本研究は、JSPS科研費JP20H00222、JP20H00223、JSTさきがけJPMJPR21O5、AMED課題番号JP22he0422016の支援を受けたものです。

研究成果
 計測のためにセルロースナノクリスタル(CNC)という微量のナノ結晶を添加した液体に光を当て、高精度な偏光カメラ(Photron社製CRYSTA)と平行円板型のレオメーター(注1)を用いて、光の偏光変調(注2)を3次元的に詳細に調査、計測しました(図2)。その計測結果を、従来の応力光学則(注3)による理論と今回の研究で再注目した「二次応力光学則」を用いて解析し、その2つの法則を比較しました。その結果、二次応力光学則を使うと、実際の流体の内部ではたらく力をより正確に説明でき、実験データの予測も可能であることがわかりました。

今後の展開
 本研究による手法は、流体に直接触れることなく、内部ではたらいている力を正確に計測できるのが利点です。医療分野では血流や細胞を体外から計測することで、循環器疾患の診断や治療に役立つ新しいツールとなることが期待されます。製造業や化学分野では、高粘度のポリマーや懸濁液の加工中にかかる力を計測することで、品質向上やプロセスの最適化につながる技術基盤になり得ます。食品や化粧品業界においても、クリームやジェルなどの流れの特性をリアルタイムで評価する新たな手法として期待されています。また、高速偏光カメラ技術と組み合わせれば、より動きの大きい流体の分析が可能となり、流体工学、バイオメカニクス、さらにはナノテクノロジーやマテリアルサイエンスの分野での新たな知見につながることが見込まれます。



用語説明
注1)平行円板型レオメーター
2枚の平らな円形のプレートの間に液体を挟み、上のプレートを回転させて流体の粘度や流動特性を計測する装置。

注2)偏光変調
光の偏光状態(特定の方向に光が振動する様子)が変化する現象。流体中の応力によって光の偏光が変化するため、応力の計測に利用される。流動複屈折とも呼ばれる。

注3)応力光学則
応力と偏光変調の関係を説明する法則。固体や流体内部にはたらく力(応力)を偏光変調を通じて計測する際に用いられる。応力-流動複屈折の関係式、一次応力光学則とも呼ばれる。

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図1:本研究では、視線(光軸、黄色矢印)に対する三方向を考慮して計測した。正面(水色の点線)だけでなく、赤と緑の面も考慮している。

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図2:本研究の概略図 実験装置図(上)と、流体内部の力を三方向で調べた時に現れた偏光変調(下)。偏光変調量は、ガラス板の中心から離れるほど大きく、またレオメーターの回転速度が速いほど大きくなった。このように発現した偏光変調は流体内部に加わった応力によって変化し、二次応力光学則で説明できることがわかった。 (W. Worby et al., Examination of flow birefringence induced by the shear components along the optical axis using a parallel-plate-type rheometer, Scientific Reports 14, 21931, 2024を基に作成)

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? ◆研究に関する問い合わせ◆
 欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网 大学院工学研究院
  先端機械システム部門 教授
  田川 義之(たがわ よしゆき)
   TEL/FAX:042-388-7407
   E-mail:tagawayo(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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