環境にやさしいヨウ素を用いる炭素-炭素結合形反応に成功?創薬シードの創出研究を加速?
環境にやさしいヨウ素を用いる炭素-炭素結合形反応に成功
?創薬シードの創出研究を加速?
国立大学法人欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院生命機能科学部門の小田木 陽助教、長澤和夫教授、大学院工学府生命工学専攻の森 偉央氏、杉本考太氏は、環境にやさしい試薬として知られるヨウ素とクメンヒドロペルオキサイドに、独自に開発した有機分子触媒を組み合わせることでキラルグアニジニウム/次亜ヨウ素酸塩触媒を開発し、これがオキシインドール類同士の炭素―炭素結合を介した立体選択的酸化的カップリング反応に有効であることを見出しました。本手法は、従来用いられてきた環境負荷が大きい遷移金属や重金属酸化剤などの使用を回避できます。また本反応によって副生するのは水またはアルコールのみであることから、環境に配慮した合成化学プロセスです。本反応によって得られるキラルなビスオキシインドール類は、多様な生物活性を有することが知られており、新たな創薬シードの創出への研究開発の加速が期待されます。
本研究成果は、アメリカ化学会が発行するACS Catalysis誌(1月30日付)に掲載されました。
論文名:Enantioselective Oxidative Enolate Coupling of Oxindoles Catalyzed by Chiral Guanidinium Hypoiodite
著者名:Minami Odagi, Io Mori, Kota Sugimoto, Kazuo Nagasawa
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.2c05677
現状
次亜ヨウ素酸(IO?)は、過酸化水素やアルコール類の過酸化物のような安価かつ安全な酸化剤を用いて、ヨージド(I?)から系中で調整が可能な酸化性活性種です。当該活性種は、カルボニル基α位のような求核種を酸化的に活性化することで、脱水素型の結合形成反応を実現します。この次亜ヨウ素酸は、キラル(左手と右手のように、鏡像であり異なる形をしている)な対カチオンを用いたキラル次亜ヨウ素酸塩とすることで、触媒する反応の不斉化(キラルな立体構造を選択的に合成すること)が可能です。しかしながら、これまでの報告は、炭素-酸素、炭素-窒素結合形成反応に限定されており、立体選択的な炭素-炭素結合形成反応の報告は皆無でした。また、キラル次亜ヨウ素酸塩に用いられる対カチオンについても、キラル第四級アンモニウム触媒しか報告されておらず、キラル次亜ヨウ素酸塩触媒系において不斉反応への展開が可能な、新たな触媒構造の探索が望まれていました。
研究体制
本研究は、欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院生命機能科学部門の小田木 陽助教、長澤和夫教授、大学院工学府生命工学専攻博士前期課程の森 偉央氏、杉本考太氏らによって実施されました。また本研究は、JSPS科研費 基盤研究(B)17H3052、基盤研究(C)20K05488、新学術領域研究“中分子戦略”公募研究18H04387、2021年度日揮?実吉研究助成 No.21を受けて実施されました。
研究成果
本研究では、当研究室で開発した二官能基性有機分子触媒であるグアニジン-ウレア触媒を、次亜ヨウ素酸の対カチオンとして用いることで、世界初の次亜ヨウ素酸塩触媒系による立体選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発に成功し、キラルビスオキシインドール類の効率的な合成法を確立しました。今回開発したキラルグアニジニウム/次亜ヨウ素酸塩触媒系は、オキシインドール類の酸化的エノラートカップリング反応において、可能性のある三種類の生成物の中から、(R,R)-体のみを選択的に合成できます(図A)。また、本触媒系を用いることで、二種類のオキシインドール類を用いたクロスエノラートカップリング反応においても、高い立体選択性でカップリング体を得ることに成功しています(図B)。
今後の展開
本研究成果から、次亜ヨウ素酸塩触媒系において第四級アンモニウム触媒に加え、グアニジニウム触媒も不斉誘起に有効であることが示されました。これにより、これまで用いられてこなかった様々なオニウム触媒の適用が加速されることが予想されます。今後、さらなる触媒系の開拓により、新たな不斉反応の開発が期待されます。また、今回開発したビスオキシインドールは、WIN 64821やキモナンチンなどの生物活性物質と多くの共通構造を有することから(図C)、これら化合物の効率的な合成を可能とするだけでなく、ビスオキシインドール骨格をもつ新規創薬リードの創出にも大きく寄与することが期待されます。
◆研究に関する問い合わせ◆
欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院
生命機能科学部門 助教
小田木 陽 (おだぎ みなみ)
TEL/FAX:042-388-7295
E-mail:odagi(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
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生命機能科学部門 教授
長澤 和夫 (ながさわ かずお)
TEL/FAX:042-388-7295
E-mail:knaga(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
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