MEMS素子の機械的非線形性を熱効果により低減 素子の信号対雑音比が10倍以上増大
MEMS素子の機械的非線形性を熱効果により低減
素子の信号対雑音比が10倍以上増大
国立大学法人欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院先端電気電子部門の張亜准教授、工学府電気電子工学専攻博士前期課程の吉岡佑理氏、工学部電気電子工学科の飯森未来氏、北京工業大学の劉シン准教授、東京大学生産技術研究所の邱博奇氏と平川一彦教授は、スマホの赤外線センサや発振器等で使われているMEMS素子の機械的非線形性を熱効果により低減し、素子の信号対雑音比を10倍以上増大させることに成功しました。この成果により、今後、MEMS素子の超高感度センシングへのさらなる応用が期待されます。
本研究成果は、Applied Physics Letters(10月18日付)に掲載されました。
論文タイトル:Thermal tuning of mechanical nonlinearity in GaAs doubly-clamped MEMS beam resonators
URL:https://doi.org/10.1063/5.0065271
現状
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、半導体微細加工技術を用いて作られる大きさ数十マイクロメートルほどのデバイスで、スマホの加速度センサや赤外線センサをはじめ、多くの電気製品で使われています。その中で共振型MEMS素子は高感度のセンサとして広く応用されています。しかし、MEMS素子では機械的非線形性(注)と呼ばれる、振幅の大きさによって共振の周波数が変動してしまう現象が存在するため、大きな振幅で励起された場合、MEMS素子の共振周波数は不安定になります。それを避けるために、振動振幅を線形振動領域の数十ナノメートル程度の非常に小さい値にする必要がありました。そのため、MEMS素子を用いた計測における信号対雑音比が制限されていました。
研究体制
本研究は、国立大学法人欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院先端電気電子部門の張亜准教授、大学院工学府電気電子工学専攻博士前期課程の吉岡佑理氏、工学部電気電子工学科の飯森未来氏、北京工業大学の劉シン准教授、東京大学生産技術研究所の邱博奇氏と平川一彦教授によって実施されました。なお、本研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST A-STEP)、日本学術振興会科学研究費補助金(19K15023,21K04151)の助成を受けて実施されました。
研究成果
一般的なMEMS両持ち梁構造は、振動振幅が増大するにつれ、梁がより伸張され、材料が堅くなる性質があります(hardening)。従って、振動振幅の増大とともに共振周波数は上昇し、hardening非線形性(注)を示します(図1)。そのため線形振動領域を保つためには、振動振幅は数十ナノメートル程度の非常に小さい値にする必要がありました。本研究では、MEMS梁に薄膜抵抗を作製し、それを利用してMEMS梁を電気的に加熱することによって、MEMS梁の非線形性を強く低減できることを発見しました。非線形を制御されたMEMS素子においては、線形領域の振動振幅が、非線形性を制御していないMEMS素子のそれに比べて、10倍以上に増大できることを確認しました(図2)。
この非線形性制御効果の物理的機構は、熱応力によるMEMS梁の座屈効果です。この座屈効果は、MEMS共振にsoftening非線形性(注)をもたらし、MEMS梁に本来存在するhardening非線形性を補償し、全体的非線形性を低減しました(図2)。本研究は世界で初めて熱効果によるMEMS共振器の非線形制御を発見したものです。
今後の展開
従来のMEMS共振素子は、材料の持つ非線形性のために、線形領域での出力信号が非常に小さいという問題がありました。本研究による成果を用いて、MEMS素子の非線形性を強く抑制し、MEMS素子の信号対雑音比を大幅に向上させることができるため、超高感度センシングへの応用展開が期待できます。
用語解説
注)非線形性
MEMS素子の共振振動周波数が振幅に依存すること。振幅が大きくなると振動周波数が上昇する場合、hardening非線形性という。逆に、振幅が大きくなると振動周波数が減少する場合、softening非線形性という。
◆研究に関する問い合わせ◆
欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院
先端電気電子部門 准教授
張 亜(ちゃん や)
TEL/FAX:042-388-7663
E-mail:zhangya(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp?
関連リンク(別ウィンドウで開きます)
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