創薬リード創出へ向けた第一歩 (+)-ステファジアミンの不斉全合成に成功?独自に推定した生合成仮説も検証?
創薬リード創出へ向けた第一歩
(+)-ステファジアミンの不斉全合成に成功
?独自に推定した生合成仮説も検証?
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国立大学法人欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院生命機能科学部門の小田木陽助教、長澤和夫教授、大学院工学府生命工学専攻の的羽泰世氏、細谷圭介氏は、ノルハスバナンアルカロイドである(+)-ステファジアミンの初の不斉全合成に成功しました。(+)-ステファジアミンは、その高度に縮環した特異なカゴ状骨格が合成化学的に非常に興味深く、これまで多くの合成化学者に注目されてきた天然物です。また、ハスバナンアルカロイドは数多くの類縁体が知られ、その一部は新薬の候補化合物(創薬リード)として期待されています。本グループは、(+)-ステファジアミンの(–)-メタファニンからの生合成経路を推定し、アザーベンジル酸転位反応を用いた一段階での(+)-ステファジアミンの全合成を達成しました。この成果は、未だ明らかとなっていない(+)-ステファジアミンの生合成経路や、創薬リード創出のための生物活性の解明への寄与が期待されます。
本研究成果は、アメリカ化学会が発行するJournal of the American Chemical Society誌(2月16日付)に掲載されました。
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.1c00047
現状
ハスバナンアルカロイドは、主にハスノハカズラ属 (Stephania sp.) の植物から単離される天然物の一群です。当該化合物群は、共通してハスバナン骨格を有しており、(–)-ハスバニノン(1)や(+)-ペリグラウシン(2)に代表されるように、ABC環上の官能基の種類や酸化度の違いにより、40種類を超える類縁体が知られています(図A)。その中の一部は、抗ウィルス活性や抗菌活性など有用な生理活性を示すことから、1950年代にはじめて発見されて以来、全合成の標的として、また創薬リードとして、合成化学者や創薬化学者の注目を集め続けています。その中で (+)-ステファジアミン(4)は、ハスバナン骨格のC環が五員環に縮小したノルハスバナンアルカロイドです。4の特徴的なカゴ状骨格からこれまで生合成経路や生物活性はこれまで全く解明されておらず、天然からの供給量も極めて微量(単離収率0.00004%)であることから、化学合成による供給が望まれていました。
研究体制
本研究は、欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院生命機能科学部門の小田木陽助教、長澤和夫教授、大学院工学府生命工学専攻博士前期課程の的羽泰世氏、博士後期課程の細谷圭介氏(日本学術振興会特別研究員DC2)らによって実施されました。また本研究は、JSPS科研費 基盤研究(B)17H3052、基盤研究(C)20K05488、新学術領域研究“中分子戦略”公募研究18H04387、日本学術振興会特別研究員奨励費19J13325の助成を受けて実施されました。
研究成果
本研究では、(+)-ステファジアミン(4)と構造が類似している(–)-メタファニン(3)が、4の生合成前駆体であると推定しました。すなわち(+)-ステファジアミンは、(–)-メタファニンとアンモニアとの縮合で生じる中間体5を経て、アザ?ベンジル酸転位反応により生合成されると考えました(図B)。当該仮説に基づき、まずは(–)-メタファニンの不斉全合成に着手しました。ハスバナンアルカロイド類の合成上の課題として、C13位全炭素第四級炭素を含むハスバナン骨格の構築が挙げられます。本研究では、市販品より大量合成が可能なジフェノールエタン誘導体6に対する、①C10位の立体化学を足がかりとしたジアステレオ選択的な酸化的フェノールカップリング反応、②位置選択的な分子内アザ-マイケル反応、により、ハスバナン構造を有する四環性鍵中間体8の構築に成功しました(図C)。その後いくつかの変換反応を経て、(–)-メタファニンの不斉全合成に成功しました。さらに、合成した(–)-メタファニンを用い、推定した生合成に基づきアザ?ベンジル酸転位反応の検討を行いました。その結果、室温でアンモニアを作用させるだけでアザ?ベンジル酸転位反応が進行し、(+)-ステファジアミンがほぼ定量的に得られることを見出しました。本結果は、推定した(–)-メタファニンから(+)-ステファジアミンへの生合成経路を強く示唆します。
今後の展開
本研究成果から、(+)-ステファジアミンを化学合成により供給することが可能となりました。これにより、これまで未知だった(+)-ステファジアミンの生物活性を明らかにすることができます。これは創薬リード創出への第一歩となります。また今回開発した四環性鍵中間体8は、その他のハスバナンアルカロイドの合成への応用も可能であることから、今後、様々なハスバナンアルカロイドの化学合成による供給が期待されます。
◆研究に関する問い合わせ◆
欧洲杯线上买球_欧洲杯足球网-投注|官网大学院工学研究院
生命機能科学部門 助教
小田木 陽 (おだぎ みなみ)
TEL/FAX:042-388-7295
E-mail:odagi(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
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生命機能科学部門 教授
長澤 和夫 (ながさわ かずお)
TEL/FAX:042-388-7295
E-mail:knaga(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
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